1.代官山『代官山ライチ』
酒場の手薄なお洒落エリアの地下が夜な夜な賑わう
『代官山ライチ』:駅と「代官山T-SITE」のちょうど中間。小さいながらも個性的なセレクトショップが密集する白亜の集合ビルの奥、それも地下という立地はまさにダンジョン。スマホ片手に探し当てるまでのワクワクも一興だ。ウォークインでやってくるゲストはほぼ皆無というだけに、“代官山の隠れ家”としてブックマークしておきた
代官山に飲みに行く人は多くない。そもそも酒場自体が少ないからだ。
飲食店にとってそんなハンデともいえるロケーションを、「逆にブルーオーシャンと捉えました」とは『代官山ライチ』のオーナー・染谷崇裕さん。
ラムに特化した中華酒場のメニューがラインナップ
『代官山ライチ』:「ラムたたき 盛り合わせ」¥1,200
わざわざ足を運んでもらえる店になるべく、苦手な人が一定数いたとしても尖ったメニューで勝負すると決め、選んだのがラム肉だ。
中華ではメジャーな食材ではあるが、まだまだ“ガチ中華”寄りであるラム肉。そこで、“町中華”をイメージし、カジュアルで気負わないメニューを料理長と開発。
約40のメニューのうち半数はラム肉を使うというこだわりが潔い。
肩ロース、もも、タン、ハツという希少部位を低温調理で提供。オリジナルの麻辣ソースがアクセントに。
「ラムたたき 盛り合わせ」¥1,200。
『代官山ライチ』:「ラムスペアリブのスパイシー唐揚げ」1本¥550
炭酸系と相性抜群の「ラムスペアリブのスパイシー唐揚げ」1本¥550。
『代官山ライチ』:「ラム餃子 どっさりパクチーのせ」¥550
旨みが強い腕の部分をミンチにし、キャベツとねぎでシンプルに仕上げた「ラム餃子 どっさりパクチーのせ」¥550。
『代官山ライチ』:全26席の店内。カウンター、テーブル席を備える
打ちっぱなしのコンクリート空間の中央に掲げられた黒板メニューや妖しく光るネオンサイン、冷蔵庫からゲストが直接酒を選ぶスタイルなど、“こなれ感”がまた代官山らしく洒脱。
「ガチ中華+町中華」のハイブリッドな一軒として、今後の“ネオ”な中華を牽引する存在になりそうだ。
オーナーはIT企業出身のビジネスマンという意外性
『代官山ライチ』:オーナー・染谷崇裕さん
染谷さんは楽天やリクルートでWEBプロデューサーとして活躍した人物。
会社員時代、自分で立ち上げたブランドが認知されていく面白さに目覚め起業を決意。高校の同級生だった料理長を誘って戦略的にこの店を立ち上げた。
「ガチ中華+町中華」は彼のアイデア。
『代官山ライチ』(代官山/中華、居酒屋)について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめ。
『代官山ライチ』。酒場の手薄なお洒落エリアの地下が夜な夜な賑わう
2.八丁堀『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』
カウンター越しにシェフと会話できる“密な距離感”が心地良い
『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』:カウンターとテーブル席を備える
酒場使いができる中華は、どのエリアでも大盛況。だが、毎日でも通いたくなるかというと、コッテリの脂や固定化された定番メニューを前に二の足を踏んでしまう人は多いだろう。
大人の理想は、その時々で変わる旬の食材を使った一品が並び、胃袋の具合で軽めも重めも調節できて、さらに旨い酒が並ぶ店。
そんな都合のいい店はそうそう見つからないからこそ、『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』(八丁堀/中華、居酒屋)は貴重な存在だ。
ビストロのような、こなれた黒板メニューの創意工夫が凄い
『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』:堅苦しさのない空間で、シェフと相談しながらメニューを決められるのもこの店ならでは。料理に合わせてサワー類や紹興酒の提案もしてくれる。6月からは2階に水餃子と焼売、ハイボールをメインにしたスタンディングもオープン。ますます盛り上がりを見せる
「旬の食材を中華で味わおうと思うと高級店でのコースになってしまう。かといって町中華のようにドリンクの選択肢が少ないのも困る。酒呑みの自分が通いたい店を考えたら、このスタイルになった」と笑うのはシェフの金岡永哲さん。
『赤坂璃宮』で7年腕を磨き、正統派の広東料理が技術のベースにあるから、進取の気性に富んだメニューはいずれもかなりの本格派。
『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』:「旬の春巻き」2本¥1,210
「旬の春巻き」2本¥1,210。
この日の食材はホタルイカと生しらす。6月からはいちじくとブルーチーズ、豚肉の春巻きが登場。
『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』:「海鮮と野菜のマーボー」¥1,430
酒のアテになる麻婆豆腐がコンセプトの「海鮮と野菜のマーボー」¥1,430。
『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』:「魚とたっぷり野菜のセイロ蒸し」¥1,650
高級中華の定番“清蒸鮮魚”をカジュアルに解釈した店の看板メニュー。
「魚とたっぷり野菜のセイロ蒸し」¥1,650。
昨今のトレンドを押さえた国産ボトルの品ぞろえが充実
『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』:新潟県の越後薬草で作る「THE HERBALIST YASO GIN」や南九州のテロワールを大切にした「AKAYANE」など、知る人ぞ知る国産のクラフトジンが充実。また、柑橘と山椒の香りが新感覚のボタニカル系麦焼酎やリキュールもそろい、酒場らしい楽しさもあり
仕事帰りにふらりと立ち寄りたくなる“サードプレイス”な中華酒場という存在が新しい。
『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』(八丁堀/中華、居酒屋)について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめ。
八丁堀『MUDAN JIANG(ムーダン ジアン)』。カウンター越しにシェフと会話できる“密な距離感”が心地良い
3.渋谷『タートル』
“マークシティの裏”という渋谷でも隠れ家的なエリアで賑わう
『タートル(TURTLE)』:店があるのは、井の頭線渋谷駅から徒歩1分の立地ながら、繁華街の喧騒とは打って変わって落ち着いたエリア。「渋谷マークシティ」横の坂をのぼった人気もまばらな一画にも関わらず、毎晩19時30分頃には、センスの良い大人たちで60席近くある店内が一気に埋まる
「渋谷の注目エリアに店を出すなら、ただの居酒屋じゃ面白くない。大人が満足できる中華のエッセンスを入れたかった」と話すのは、『タートル(TURTLE)』(渋谷/居酒屋)のオーナー・久我耕輔さん。
ネオ居酒屋の仕掛け人として千歳烏山『酒場アカボシ』や三軒茶屋『赤星』を展開する人物だ。
中華なのにあの有名和食店監修という料理のクオリティに驚かされる
『タートル(TURTLE)』:「よだれカンパチ」(¥980)は、刺身用カンパチを麻辣ソースに漬けて。“中華版カルパッチョ”のような仕上がり
メニュー開発は、親交の深い和食料理人の浅倉鼓太郎さんとともにミシュランの星付き店を視察。
『タートル(TURTLE)』:「雲白肉」(¥1,080)は、豚肩ロースやきゅうりを和の技法で極薄にカットすることで洗練された印象に
「よだれカンパチ」など魚介を使ったメニューを豊富にし、酢豚や雲白肉などの定番は独自の新しい解釈で提案する。
ドリンクは中華の油を切ってくれる“芋のソーダ割り”がオススメ。
芋焼酎のラインナップは、店内のモザイクタイルと同様に「カラフル」がキーになっており、白芋、紅芋、紫芋、オレンジ芋など風味別にオンメニュー。
グラフィカルなラベルのものばかりがセレクトされている。
どんなシーンでも使える、豊富な席種が地味に嬉しい
『タートル(TURTLE)』:店内には立ち飲み席やカウンター席、ボックス席といった多様な席種がそろう
広い店内はさまざまなゾーンに分かれており、立ち飲み席やカウンター席、ボックス席といった多様な席種がそろう。
立ち飲み席の奥に間仕切りのようなガラス扉を設けているのは、「テラス席を店内に作りたかった」という久我さんの思いから。
『タートル(TURTLE)』:ボックス席
店内の手前側と奥側で同じカラータイルを使用するなどして、随所で“空間を繋ぐ”工夫が施されている。
『タートル(TURTLE)』:カウンター席
ひとりでの立ち飲みからデート、仲間との飲み会まで、オールマイティに楽しませてくれる人気店だ。
『タートル(TURTLE)』(渋谷/居酒屋)について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめ。
ネオ居酒屋の仕掛け人が新たに手掛けた大人の酒場『タートル』は、桁外れの賑わいを見せる!
4.北千住『ジャンソーアタル』
どこにあるの!?と迷うスピークイージー感満載なアプローチ
『ジャンソーアタル』:駅前から続く“飲み横”を3分ほど進んだ先の2階に店はある。ただし、外観は以前の雀荘のままなので、通り過ぎないようご注意を
雀荘を改装した酒場……それだけで、他にない存在と分かる。『ジャンソーアタル』(北千住/居酒屋、中華)は、2021年のオープン以来、北千住への呼び水となるほどの人気店だ。
このシチュエーションだけで気持ちが昂ぶってくるが、店があるのが北千住駅から続く飲み屋横丁(通称:飲み横)の最奥部というのも、心惹かれる。
雀荘の怪しげな雰囲気を活かしたエッジィな内装
『ジャンソーアタル』:店内はカウンターがメインだが、麻雀卓を利用したテーブル席もフォトジェニックで人気
店内をのぞくと、麻雀卓がテーブルに使われていたり、“雀荘當”のネオンが光っていたりと、令和から昭和にタイムスリップしたかのよう。
『ジャンソーアタル』:“雀荘當”のネオンや、アンティークの家具、特注のレトロなポスターやさりげに飾られたレコードなど、どこを切り取っても絵になる
その上、連日立ち飲みスペースまでぎっしりの盛況ぶりだというから驚く。
鉄板で仕上げるスペシャリテは“マジで鉄板”!
『ジャンソーアタル』:「焼きビーフン」各種と「スパイスラム焼」は、注文ごとに鉄板で焼き上げるため、いい香りが店中に広がる
そんな空間で味わいたいのはスパイスの効いたつまみや、鉄板焼き。
北千住で人気の『酒呑倶楽部アタル』の系列店だけあって、酒飲みのツボを押さえたメニューが心憎く、一品¥380〜の安さも◎。
『ジャンソーアタル』:上/「焼豚ビーフン」¥825、下/「スパイスラム焼」¥880
上がステーキのような焼豚が美味しい「焼豚ビーフン」¥825、下がヨーグルトソースとサルサソースで食べる「スパイスラム焼」¥880。
『ジャンソーアタル』:「牛ウニ焼売」(¥858)
「牛ウニ焼売」(¥858)は牛肉のミンチとウニで中華風ウニクに。
『ジャンソーアタル』:「干海老醤カマンベール」(¥638)の自家製醤は、干エビとネギとラー油を混ぜてペースト状にしたもの。カマンベールと相性抜群
自家製漬け込みサワーやナチュラルワインがグイグイ進むこと間違いなし。次の週末は北千住で非日常を!
『ジャンソーアタル』(北千住/居酒屋、中華)について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめ。
北千住『ジャンソーアタル』。どこにあるの!?と迷うスピークイージー感満載なアプローチ
5.巣鴨『シノワ エトワール ヴェリテ』
中華なのにアールヌーボー調なギャップに心動かされる
『シノワ エトワール ヴェリテ』:店内は木やタイルをふんだんに使った温かな雰囲気。ペンダントライトや小物には金色のアールヌーボー調のアイテムを選んでポイントに
巣鴨駅南口の先に広がる大和郷は、「六義園」を中心とし、かの岩崎弥太郎も愛した高級住宅地。その近くに、カフェのように佇む中華が『シノワ エトワール ヴェリテ』(巣鴨/中華)だ。
温もりのある木の扉を開けると、そこに現れるのは、ナチュラルでクラシカルなインテリア。
『シノワ エトワール ヴェリテ』:手書きメニューや箸置きに至るまでオーナー和田さんの女性らしい感性が活かされている
これにはオーナー和田真実さんの「とにかく居心地のいい空間にしたかった」との思いが込められている。
しかし、その見た目のイメージとは裏腹に味は本格派。
とことん実力派!な名店出身シェフのディープな味わい
『シノワ エトワール ヴェリテ』:星シェフの味に惚れ込んだオーナーが直談判し、店のオープンにこぎつけた。その腕前は中国人が食べても絶品と評される
シェフの星 久人さんは『銀座アスター本店』で料理長を務めたあと、『GINZA沁馥園』でも料理長に。
中国の特級厨師などから教わった秘伝の技を取り入れ、スパイスや酒を巧みに使って味を染み込ませ、鮮烈だがどこか優しい味に仕上げられている。
『シノワ エトワール ヴェリテ』:「6種類色々愉しめる前菜の盛り合わせ」¥1,540(写真は2人前)
「6種類色々愉しめる前菜の盛り合わせ」¥1,540(写真は2人前)。
「酔っ払い海老」などワインを誘う前菜がずらり。
『シノワ エトワール ヴェリテ』:「岩手県産岩中豚の黒酢豚」(¥1,980)
「岩手県産岩中豚の黒酢豚」(¥1,980)は香料煮をして揚げる本場の味。
『シノワ エトワール ヴェリテ』:「夏野菜の麻辣おこげ」(¥2,420)
「夏野菜の麻辣おこげ」(¥2,420)は土鍋で。
ワインはウォークインセラーからジャケで選ぶ!
『シノワ エトワール ヴェリテ』:ワインはフランスを中心にイタリア、オーストリア、南アフリカ、日本など世界のナチュラルワインを用意。ゲストが入って選ぶ前提で、手前に合わせやすく手頃なワインが並び、奥にツウ好みのワインが置かれている。ボトルは100種類(¥5,000~¥13,000)
それらと合わせたいのがナチュラルワイン。ウォークインセラーから“ジャケ”で選ぶ、その楽しさもまた人気の理由。
これぞ、“令和の町中華”を体現する一軒なのだ。
『シノワ エトワール ヴェリテ』(巣鴨/中華)について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめ。
巣鴨『シノワ エトワール ヴェリテ』。中華なのにアールヌーボー調なギャップに心動かされる
6.渋谷『KAMERA(カメラ)』
お茶ハイだけで10種類という異常なこだわりっぷり
『KAMERA(カメラ)』:怪しいブルーのネオンが印象的なファサードは、賑やかな通りでも異彩を放つ
新しい中華の波を感じるなら、渋谷百軒店の『KAMERA(カメラ)』(渋谷/居酒屋、アジア料理・エスニック)へ。
もはやネオ酒場の代名詞ともなったこの店には、連日、界隈のクラブや飲食店の行き帰りに若者がふらりと訪れるほか、東カレで取材して以来、成熟した大人も足を運んでいる人気店だ。
フレンチシェフ監修の創作料理は驚きの美味しさ
『KAMERA(カメラ)』:「金木犀緑茶ハイ」¥715、「薔薇紅茶ハイ」¥715、「KAMERAオリジナルブレンドハイ」¥825、「JJ(ジャスミン×ジャスミン)」¥770
『KAMERA(カメラ)』(渋谷/居酒屋、アジア料理・エスニック)の看板メニューは熟成焼売とお茶ハイ。一般的にフィーチャーされることのなかったお茶ハイを追求。高級評茶師JENIさんが選定した茶葉を使用し、福岡の蔵元「篠崎」で製造したオリジナル焼酎で割られている。名物のウーロン茶ハイの他にも多様なラインナップが。
オーナーである目良慶太さんとフレンチシェフの亀谷 剛さんがアイデアを出し合い、定番の焼売とドリンクを進化させた。
料理は何種類ものスパイスを調合して発酵させたり、自家製の調味料を仕込んでいたりと手が込んでいる。
『KAMERA(カメラ)』:「蟹とイクラの焼売」(¥1,100)
亀谷シェフは、発酵の技術を取り入れることで、旨みを凝縮した焼売を完成。
「蟹とイクラの焼売」(¥1,100)は、山形豚のひき肉に15種類のスパイスを入れて、海の幸をトッピング。
『KAMERA(カメラ)』:「岩海苔ときのこの春巻き」¥715
3種類のきのこと岩海苔をガーリックオイルで炒め、アヒージョを包んで揚げたような味わいに。
「岩海苔ときのこの春巻き」¥715。
まるで“チーム友達”なスタッフがお洒落過ぎる
『KAMERA(カメラ)』:金髪がトレードマークの店長・ナミカイキョウスケさんをはじめ、スタッフ全員が話しかけやすい雰囲気
気さくなスタッフとの会話も楽しみのひとつで、音楽やファッションなど共通の趣味があれば、他のゲストを交えて会話が盛り上がることも。
そんな店内のムードもスパイスとなる“カルチャーのある店”は、まさに、中華の次世代的存在。
これまでウォークインのみだったが、今回初めて予約が可能に。デート利用にも安心だ。
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渋谷『KAMERA(カメラ)』。お茶ハイだけで10種類という異常なこだわりっぷり
東京でいま話題の“ネオ中華”が気になったら、行きたいお店リストに登録しよう!
いかがでしたでしょうか。
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