2023年、話題の蕎麦店3選!名をあげた職人たちが営む、新しき名店たち
レストランまとめ

2023年12月31日

2023年、話題の蕎麦店3選!名をあげた職人たちが営む、新しき名店たち

ミシュランの星やビブグルマンの獲得、不動の人気店の確立など、その名を轟かせた蕎麦職人たち。

つかの間の休業や地方への移転、修業に出るなどしていた彼らが、2023年春からまた精力的に活動を始め、新店を続々オープン!

商店街や路地裏、住宅街と思い思いの地で構えたその城は、早くも強烈な個性を放っている。

“熟成蕎麦”に“在来蕎麦”、はたまた“水こし蕎麦”に至るまで…さまざまな哲学を駆使した蕎麦へのアプローチがいま面白い!

この記事のポイント

1.修業の旅に出た大将が、13年をかけて辿り着いた“熟成蕎麦”という答え 『竹ノ下そば』@原宿

『竹ノ下そば』:「打ちたてと田舎の2種食べ比べ」3,980円。打ち立て蕎麦の品種は茨城県の常陸秋で、コシがあって甘やか(写真奥)。写真手前の田舎蕎麦は熟成によって濃く深い色合いに

『竹ノ下そば』:「打ちたてと田舎の2種食べ比べ」3,980円。打ち立て蕎麦の品種は茨城県の常陸秋で、コシがあって甘やか(写真奥)。写真手前の田舎蕎麦は熟成によって濃く深い色合いに

若者で賑わう原宿竹下通り。その横道を一歩入ったビルの地下に潜む新店がここ『竹ノ下そば』。地下に下りれば、外の雑踏とはうって変わって凛とした空気に包まれた空間が現れる。

品書きを見てまず目を引かれるのは、田舎蕎麦の“熟成”の文字。

マニアックな内容にただ者ではないと思いきや、ご主人の山越龍二さんは日本酒ライターから蕎麦職人に転身。“ビブグルマン”でも紹介された石神井『野饗』を営んでいた経歴の持ち主。

3年の充電期間を経て、再スタートを切った同店では、さらに磨きのかかった手打ち蕎麦と日本酒を楽しませてくれる。

看板メニューは「打ちたてと田舎の2種食べ比べ」。

田舎蕎麦は甘みを引き出すため水回しの状態で10日間以上寝かしているそうで、「品種は本来の雑穀の香りが豊かな風味に変わる長野県南相木村の在来種です」と山越さん。

もちろん日本酒も充実。

『竹ノ下そば』:グラス 800円~

『竹ノ下そば』:グラス 800円~

日本酒は温度にこだわり、冷酒(6℃)、ひや(15℃)、常温とそれぞれに適した温度帯別に表記。グラス 800円~。

『竹ノ下そば』:昭和39~40年2月にかけて醸造した秘蔵酒「直実」。グラス 58,800円。手前は「国産鴨の炙り焼き」1,580円

『竹ノ下そば』:昭和39~40年2月にかけて醸造した秘蔵酒「直実」。グラス 58,800円。手前は「国産鴨の炙り焼き」1,580円

中でも長期熟成酒はここでしか味わえない逸品がそろっている。

蕎麦の求道者、山越龍二氏とは?

「とにかく蕎麦打ちの回数を重ねたいといろいろな店で蕎麦を打ってきました」

「とにかく蕎麦打ちの回数を重ねたいといろいろな店で蕎麦を打ってきました」

ビブグルマンを獲得後、後進に店を譲り修業の旅に。その情熱は多くの大人を魅了する。

2.港区時代とは裏腹な目白の古民家で、究極の蕎麦の世界へと挑む 『蕎麦おさめ』@目白

『蕎麦おさめ』:目白駅から徒歩約10分。路地に佇む一軒家。靴を脱いで上がれば自ずと心も和やかに

『蕎麦おさめ』:目白駅から徒歩約10分。路地に佇む一軒家。靴を脱いで上がれば自ずと心も和やかに

2018年、在来種の蕎麦に特化した蕎麦店として西麻布に店を構えて以来、多くのグルマンらに愛されてきた『蕎麦おさめ』。

この蕎麦の名店が2023年4月、目白に移転。築100年の古民家をリノベーションした閑静な一軒家に生まれ変わった。

趣は一変したものの、ご主人・納 剣児さんの、“在来蕎麦”への思いの深さは以前のまま。

『蕎麦おさめ』:富山県山田清水の在来蕎麦で打った「細挽きせいろ」1,320円。たおやかな甘みがあとを引く

『蕎麦おさめ』:富山県山田清水の在来蕎麦で打った「細挽きせいろ」1,320円。たおやかな甘みがあとを引く

ちなみに在来蕎麦とは、交雑することなくその土地で昔から栽培されてきた蕎麦のこと。

「小粒ながら、香り高く濃厚な味わいが魅力ですね」とは納さん。その言葉どおり、穀物感溢れる香りと豊かな甘み、そしてあとを引く旨みの余韻は在来種ならではだ。

現在、店では常時20種を用意。毎日3種をそれぞれの特質に合わせ、せいろ、粗挽き、玄挽きに打ち分けている。

八寸で一献楽しめるのも、この店ならでは!

『蕎麦おさめ』:「蕎麦三昧コース」(8,800円)の前菜盛り合わせ。生湯葉やにしん、ぜんまい、板わさなど旬の酒肴11品が並ぶ

『蕎麦おさめ』:「蕎麦三昧コース」(8,800円)の前菜盛り合わせ。生湯葉やにしん、ぜんまい、板わさなど旬の酒肴11品が並ぶ

また、「そばがきの磯辺揚げ」や「クリームチーズの粕味噌漬け」など、気の利いた肴や日本酒も豊富。

坪庭を眺めつつ風情溢れる店内で、蕎麦前を楽しむひと時を満喫したい。

探求心強き職人、納 剣児氏とは?

『蕎麦おさめ』:『竹やぶ』『東白庵かりべ』で修業を積んだあと、在来蕎麦の美味しさに目覚め、独立

『蕎麦おさめ』:『竹やぶ』『東白庵かりべ』で修業を積んだあと、在来蕎麦の美味しさに目覚め、独立

“在来蕎麦”に魅せられて10年。風土に根付いた個性を求めて、今日も野趣に富んだ十割を打つ。

流浪のレジェンドが民家の中で開幕する、伝説の蕎麦の第7章 『仁行』@浅草

 『仁行』:昭和の下町のような雰囲気が漂うエントランス

『仁行』:昭和の下町のような雰囲気が漂うエントランス

神田から伊豆、そして再び都内に戻ったあと、2016年に群馬の富岡の実家に戻り『仁べえ』を開くも、3年で茨城の笠間に移転……。

流浪の名蕎麦職人・石井 仁さんが7年ぶりに帰京。浅草の美食エリア・観音裏にひっそりと店を構えたのが、『仁行』。

その店構えは、店舗というよりまさに普通の民家。扉を開け、靴を脱いで上がれば、昭和レトロ満載の空気感に包まれる。

だが、蕎麦は一級。東銀座『古拙』、日本橋『仁行』とミシュランの星を取り続けたその腕は少しも衰えていない。

『仁行』:コースの〆に出される「盛り蕎麦」。蕎麦は群馬県の赤城産と千葉県の成田産をブレンド。通称“水こし蕎麦”と呼ばれるそれは、幅1mm程度と極細

『仁行』:コースの〆に出される「盛り蕎麦」。蕎麦は群馬県の赤城産と千葉県の成田産をブレンド。通称“水こし蕎麦”と呼ばれるそれは、幅1mm程度と極細

そうめんのように極細の十割蕎麦は、喉越し軽く味わいもたおやか。

それも加水率65%(通常は40~50%)で打つ独自のスタイルなればこそ。石井さん曰く「喉越しの良さを追求した結果」なのだとか。

加えて驚くべきは出汁へのこだわり。蕎麦サラダや冷かけ、盛りにおろしなど、品目によって出汁やかえしの配合を変える手間のかけようなのだ。

人気の「蕎麦寿司」は、口の中ではらりと解ける

『仁行』:打ちたての蕎麦で作る「蕎麦寿司」。具材は、卵焼きときゅうり、かんぴょう、穴子など

『仁行』:打ちたての蕎麦で作る「蕎麦寿司」。具材は、卵焼きときゅうり、かんぴょう、穴子など

メニューはおまかせのコース(8,800円)のみ。ここでしか味わえない蕎麦の世界に浸りたい。

現代の蕎麦の名工、石井 仁氏とは?

『仁行』:蕎麦界のレジェンド。和食の料理人から蕎麦職人に転身と聞けば、一品料理の美味しさも納得がいく

『仁行』:蕎麦界のレジェンド。和食の料理人から蕎麦職人に転身と聞けば、一品料理の美味しさも納得がいく

店を移すこと、なんと6度。その場に留まらない自由潤達さが蕎麦づくりにも活かされる。

この記事の著者

東京カレンダー編集部

ビジネスシーンでも遊びでも東京の最先端トレンドを謳歌している一流の大人たちに向けた「より豊かで艶やかな人生」を送るためのグルメ&ライフスタイル誌「東京カレンダー」を発行。

  • ※ 本記事はグルカレに掲載されている情報や店舗が公開する情報、および当社にて取材を行った際の情報を元に料理名・予算等の情報を掲載しております。営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。